*独学我流素人による個人的見解です
*記載している内容の真偽や信憑性について責任は負えません
*特定の対象の批評批判を目的とするものではありません
*無断転載引用は全面禁止「じつめ」という音に対して「自爪」と「地爪」という2種類の漢字表記があります。
一般的に、というか、ネイル業界的に?
「自爪」という表記は間違いだとされているようです。
が、しかし。
私は「自爪」という表現が間違いであるとは思いません。
「じつめ」という1つの音に対して、
「自爪」と「地爪」という2種類の漢字で表記される
2種類の言葉があると考えます。
という事を日本語学・言語学の端っこをちょっとだけ囓った私が
長々と語ります(笑)。
写真もなにもない文章記事ですので、
興味のある、付き合ってあげてもいいよ~、という方のみ、
以下の「追記」よりご覧下さいませ。
尚、言語学的な説明はかなりざっくりとした表現をしていますので、
専門的なツッコミは受け付けておりませんw
分からない用語などはお手数ですが各自でお調べ下さい。
当記事はそういう専門的な話がしたいのではなく、
ただのざっくりとした個人の主張ですのでざっくり読んで頂けると幸いです〜。
[0回]
+閉
そもそも「自爪」が間違いであるという主張の根拠は、
「地肌」「地毛」という言葉はあるけど、
「自肌」「自毛」という言葉はない、というところにあるようです。
「地」という漢字には「生まれ持ったままのもの」という意味があり、
「生まれ持ったままの自分自身の爪」を表す漢字は「地爪」であるべきだという主張です。
それが事実なのであれば、
では何故「間違い」であるはずの「自爪」という表記がこんなに使われているのでしょう?
単なる間違いが広まってしまったという考え方もあると思いますが、
2つの表記の中からどちらから1つを選ぶには、
「地爪」と表記するより「自爪」と表記する方が自分が伝えたい意味にふさわしい、という、
何かしらの「理由」がほんの僅かでもあるはずなんです。
それはほとんど無意識によるもので、
母語話者が母語に対して自分の中に持っている言語感覚や心的辞書によるもの……とか書くと、
それこそ言語学や日本語学の話になってしまいますが。
今回は漢字の意味で見てみたいと思います。
「地」という漢字には前述の
「生まれ持ったままのもの」という意味の他にたくさんの意味があり、
ネイルに関係ありそうなものでは
「物事の基礎。下地」という意味があります。
つまり
「地爪」は
「生まれ持ったままの自分自身の爪」という意味以外に、
「基礎の爪」「下地となる爪」という意味にもなるという事です。
もちろん主に使われている意味合いは「自分自身の爪」という意味だと思いますが、
それ以外に「スカルプチュアの土台」「ジェルの下地」というニュアンスを含んでいる、
もしくは、含まれていると読み手が感じる場合もあるのではないでしょうか。
それに対して。
「自」という漢字が日常的に使われる意味は
「自ら。それ自身」という意味しかありません。
つまり
「自爪」は
「自分自身の爪」という意味になります。
1つの言葉に対して意味が複数ある場合、
どの意味で使われているかは読み手の感覚に委ねられるため、
読み手に伝わる意味合いには曖昧さが残り、多少のブレが生じます。
反対に、1つの言葉に対して意味が1つだけと限定されている場合には、
その言葉の持つ意味合いが強調される事になります。
(「なんかお腹空いたなぁ」と言うよりも、
「何か食べさせて下さい」と言った方がストレートに意思が通じる…というような事です(^^;。)
「人工物ではなく自分自身の爪です」という事を主張したい場合、
意味が限定されている「自爪」という表記を使った方がよりその意味合いが強くなる……かも?←
特に「自」という漢字は「自分」という意味と直結しているので、
「人工の爪」の反対語としての「自分自身の爪」という意味を表す時には、
よりはっきりと意思が伝わるのではないか、と思います。
もしくは、よりはっきりと意思が伝わるのではないかと思うのではないか、と思います。
説明が回りくどいですがw
ここまでは漢字の意味だけの話。
ここからちょっとネイル業界の都合が交じります。
ネイルアートはまだ新しい業界で、
「地肌」「地毛」は辞書に載っていますが「地爪」という言葉は辞書に載っていません。
存在しない言葉は必要になった段階で新しい言葉が自然発生的に作られます。
特に日本語は自由度の高い言語なので、
日本語母語話者がそれぞれ自分の言語感覚に従って「それらしい言葉」を容易に作る事が出来ます。
そしてそもそも「地」や「自」という漢字が使われてきたこれまでの歴史には、
人体に「人工物をくっつける」という概念があまり存在しないのではないかと思います。
「自分の爪に人工物をくっつけて自分の爪のように見せる」という状態を、
今まで使われてきた日本語の中にはきちんと過不足なく説明出来る言葉がなかったのです。
そこで「地肌」「地毛」という既存の言葉を参考に作られたのが「地爪」という言葉。
それはジェルやアクリルなどの「人工の爪」ではない「自分自身の爪」という意味で使われますが、
それだけでは表現しきれない状態が存在します。
そもそも「地」という漢字には、
「生まれ持ったままの」や
「素肌」という意味もあるので、
「地爪」と表記した場合には
「生まれ持ったままの素の状態の爪」という意味になります。
つまり何も塗っていない所謂「素爪」の状態です。
では
「ポリッシュを塗った爪」は「地爪」でしょうか?
私は違うと思います。
ネイル業界では爪をポリッシュで塗った状態を、
「人工物で覆われた」「人工の爪」という判断をされる事はあまりないと思いますが、
それでもポリッシュを塗った爪は「生まれ持ったままの爪」でも「素爪」でもありません。
でも人工の爪ではない「自分自身の爪」です。
ならばこの場合には「地爪」ではなく、
「自爪」と表記した方が意味合いとして正確性が高いのではないかと思います。
それぞれ微妙なニュアンスの問題ですが、
微妙なニュアンスが違うのであればそれはそれぞれが違う言葉です。
どちらかが正解で、どちらかが間違いという事にはなりません。
使い分けが出来るはずです。
そもそも「正しい日本語」なんてものは存在しません。
言葉は道具です。
相手に伝わればいいんです。
誤用だって定着すれば辞書に載ります。
生まれて間もない新しい言葉は定義が曖昧です。
言葉は使う事によって育てられます。
たくさんの人が共通の意識を持って言葉を使い続ける事によって、
その言葉の意味が定着していくのです。
新しい文化が生まれれば、新しい言葉が生まれます。
既存の言葉のルールに合わないから間違いだという事はありません。
長々と書きましたが。
エキスポ会場でネイル検定の宣伝だと思われるポスターが貼ってあって、
「○ 地爪
× 自爪
あなたもちゃんとネイルについて勉強してみませんか?」
みたいな事が書いてあって納得出来なかったので書いてみましたw
私が普段「自爪」と表記するのは、
その方が私が伝えたいニュアンスに添っていると思うからです。
これは私が日本語母語話者としての言語感覚からきているものであって、
辞書や何かで調べた結果ではありません。
それでも私はポリッシュでネイルアートを楽しむのは「自爪派」だと思いますし、
何も塗ってない私の生まれ持ったままの爪は「地爪」です。
でもそれを意識して使い分けている訳ではありません。
その時その時でなんとなく自然と私の言語感覚は「自爪」という表記を多く選んでいます。
因みに今回の主題ではなかったのできちんと触れていませんが、
途中で意味が似てるんじゃないかと説明した「地爪」と「素爪」の違いは
「生まれ持った自分の爪」が「地爪」で、
「爪に何も塗っていない状態」が「素爪」じゃないかと思います。
当記事の内容は私の個人的な意見であって、
それこそ「これが正しい」というつもりはさらさらありません。
特に議論がしたい訳ではありませんのでその点はご理解頂ければと思います。
ただ日本語学を囓った日本語好きとして、
これだけたくさんの人が使っている「自爪」という表記がただの「間違い」であるというのは、
ちょっと違うんじゃないの? というささやかな主張なのでした。
という事で。
以上、長々と最後までお付き合い下さった方ありがとうございました!m(_ _)m
+閉